…少しず つ報いら れて、段 々お金も 貯まり、 家財道具 の一つも 増えて、 ご馳走
も食べら れるよう に生活も 向上しま した。こ の頃は「 ひがみ根 性」も消 えて、
世間の人 々も私を 理解して くれるよ うになり ました。 最近、こ の近所に 新築の
貸し店が 建築され ることに なり思い 切って、 これを借 りる資金 の算段を 昔の恩
人に話し た処、三 人の方々 が賛成し て下さり 、百万円 を改めて 貸して頂 けるよ
う…とん とん拍子 に決まり 現在…建 築は八分 通りに進 行してい ます。  9月半
ば頃には 開店の見 込みです 。その時 は、ご家 族全員で 上京して 下さい。 積もる
話もある ことだし 、是非と もお出掛 け下さる よう…お 待ち申し 上げてい ます。
相変わら ず乱筆乱 文にて失 礼しまし た。奥さ んに宜し く。           
                            8 月25日  鳥居政 夫 』
 …この 手紙を受 け取った 私は…、 久しぶり に筆太の 懐かしい 筆跡をじ っと見
つめて居 たが、昔 のことが 止めども なく思い 出されて …何度読 み返して も飽き
る事がな かった。 如何にも 小気味よ く、型破 りに活躍 する彼の 力量感が 、ひし
ひしと私 に伝わっ て、胸中 にくすぶ り続けて いた迷い も一挙に ふっ切れ て…、
称賛と… 尊敬の念 がこみ上 げてきた 。「及ば ずながら …こちら も、腹を 据えて
頑張らな きゃぁ恥 ずかしい な…」発 奮した私 は…その 日から尚 一層業務 に励ん
だが…、 秋口に入 ると、仕 事が急に 忙殺状態 となり、 休日さえ も予定が 立たず
、そのま ま…年末 の突貫工 事に突入 していっ た…。私 達親子4 人連れが …「江
戸名残り  銀八」 と云う… その小粋 な「新店 」を訪ね たのは翌 年の2月 末だっ
た。5年 ぶりに再 会した両 家族は… かつての 主従関係 の敷居を 超える… 泣き笑
いの場面 になった が、それ は到底、 文字や言 葉では表 現しきれ ない…。 両者の
職業は変 わっては いたが、 彼の気迫 のこもっ た眼光は 自信に満 ちて輝い ており
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