犬の咆哮 が類を呼 んで交錯 し、不気 味に尾を 引いて… 真冬の暗 い夜空に こだま
すれば… 営舎警備 の巡邏兵 も思わず 一瞬停止 し、気を 引き締め ながら固 唾(か
たず)を 咽んで… 闇の一辺 を凝視す れば…異 様な気配 が漂って いるよう で、そ
の怖ろし さは時間 の過ぎる のを忘れ る程であ った…。 昼間にな れば機械 整備や
野戦教練 に汗を流 し、突発 的な非常 呼集は昼 夜の別も なく発せ られ、日 本軍の
前哨線の 破壊を狙 う敵軍を 阻止する 為の迎撃 隊や…… 歩哨線上 で拉致さ れて行
方不明と なった日 本兵の捜 索隊に指 名されれ ば何がさ て置いて も出動し なけれ
ばならな い……。 「太山廟 」営舎は 文字通り …第一線 の哨戒地 に在るか ら、毎
夜の不寝 番は複哨 とは云え …終始、 緊張する 。まして や…丘陵 地の「衛 兵勤務
」は…… 昼夜と雖 も予断の 許せぬ重 要任務で あり、夜 間では… 月も隠れ る闇夜
もあり、 手探り状 態の動哨 兵たちは …それこ そ、生命 を懸ける 不気味さ に…思
わずの武 者震いを して…呼 吸(いき )を弾ま すのであ る。{軍 歌へ|目 次へ}